授乳のご予定があれば、先にお知らせください
術式と切開位置によって差が出ることがあります。だからこそ、ご計画を知って設計するのと知らずに設計するのとでは結果が変わります。
多くの場合は可能ですが、お約束はしません
豊胸後に出産と授乳が可能な場合は多くあります。とくに乳腺組織を直接切除しない方法では授乳機能が保たれる場合が多いです。ただし個人の解剖学的構造と手術計画によって差が出ることがあるため、「問題ありません」と断定はいたしません。
授乳は手術だけで決まるものでもありません。出産後に授乳が難しい方は、手術を受けていない方にもいらっしゃいます。ですから当院は「手術のせいでできない」とも「手術しても必ずできる」とも申し上げず、何が影響し得るのかを分けてご説明します。



授乳機能との関連で見る要素
以下はカウンセリングで併せて確認する項目です。どれか一つが結果を決めるという意味ではありません。
| 項目 | なぜ関連するのか | 当院が行うこと |
|---|---|---|
| 切開位置 | 乳輪縁の切開は乳頭・乳輪周囲の構造により近くなります。 | 授乳のご予定があればその点を反映して切開を定めます。 |
| 乳腺組織を扱う程度 | 乳腺組織を直接切除しない方法では機能が保たれる場合が多いです。 | 組織の損傷を抑える方向のアプローチを志向します。 |
| インプラントを入れる層 | どの層に入れるかで乳腺組織に接する程度が変わります。 | 状態と目標を併せて見て層を定めます。 |
| 手術の種類 | 豊胸と縮小では乳腺組織に関与する程度が異なります。 | 縮小やリフトを含む場合は影響の可能性を別途ご説明します。 |
縮小やリフトが入る場合は話が変わります
乳房縮小は乳腺組織と乳管に直接関与する手術のため、授乳に影響し得ます。可能性を高める方向で設計することはできますが、保証はできません。この違いを曖昧にしないことが当院の基準です。
リフトも方法と範囲によって乳頭・乳輪周囲を扱うことになります。ですから出産のご予定がある場合は、手術の種類自体を見直すか、時期の調整を併せてご相談します。陥没乳頭の矯正も程度と方法によって変わるため、ご計画を先にお知らせください。
出産のご予定があるときの時期の決め方
正解が一つある問題ではなく、何を優先するかという問題です。
- 01
出産前に手術する場合
出産のご予定があるからといって必ず先送りすべきというわけではありません。ただしその後の妊娠・授乳で乳房組織の変化が起こり得る点は知ったうえでご判断いただくのがよいです。
- 02
出産・授乳のあとに回す場合
胸の変化が過ぎたあとに設計するので、計画が一度で終わる可能性が高くなります。その代わり、それまで現在の不便を我慢することになります。
- 03
授乳直後は避けます
授乳直後は乳房組織の変化が続くことがあります。十分な回復期間を置き、状態が落ち着いてから判断するほうが正確です。
- 04
いずれにせよ検診が先です
手術前に乳房超音波で現在の状態を確認します。妊娠・授乳を控えていらっしゃるなら、なおさら確認しておくほうがよいです。
授乳が終わったあとの胸
出産と授乳のあとはボリュームの減少と皮膚のゆるみが同時に現れる場合が多いです。単に小さくなるのではなく、下垂を伴うことが多いということです。この状態ではインプラントを入れるだけでは望む形にならないことがあります。
ですのでこの時期にいらっしゃる方には、豊胸だけで足りるのか、リフトも必要なのかをまず評価します。左右が違うふうに変わっているケースも多いんですね。授乳後は組織量とたるみの程度が左右で違うふうに変わることが多いからです。乳房超音波と診察で確認したうえで計画を立てます。
カウンセリングで必ずお伝えいただきたいこと
この情報があるかどうかで設計そのものが変わります。あとから伺っても戻しにくくなります。
- 出産のご予定があるか、おおよそいつ頃をお考えか。
- 以前の出産で授乳をされたか、そのとき困難があったか。
- 授乳を必ずなさりたいのか、それとも優先順位が異なるのか。
- 陥没乳頭や乳頭・乳輪に関する不便があるか。
- 最後の授乳がいつ終わったか(手術時期の判断に必要です)。
- 以前に胸の手術を受けられていればその記録。
当院が申し上げないこと
手術後に授乳が必ず可能だとはお約束しません。母乳の量や授乳の成功率を数値で示すこともいたしません。根拠なく安心させることが相談だとは考えていないからです。
妊娠中・授乳中の医学的判断は産婦人科や小児科の領域にも重なります。当院は手術と乳房の状態について分かることを正確にお伝えし、それ以外は担当の医療者とご相談いただくようご案内します。
切開位置を授乳の観点から見ると
切開ひとつで決まるわけではありません。ただ、授乳の予定を知ったうえで決めるのと知らずに決めるのとでは違います。
| 切開位置 | 授乳の観点で見るもの | どんなときに考えるか |
|---|---|---|
| 腋窩 | 乳頭・乳輪から最も離れています。 | 授乳の予定がはっきりしていて他の条件も合うとき |
| 乳房下のしわ線 | 傷が胸の下に隠れ、乳輪の周りを通りません。 | 挿入スペースを精密に取る必要があるとき |
| 乳輪の周囲 | 乳頭・乳輪周辺の構造により近くを通ります。 | 他の理由でこの経路が有利なとき、予定を伺って相談したうえで |
| 既存の傷の再利用 | 再手術では以前の切開を再び使うことが多いです。 | 以前の手術記録を確認してから決めます |
妊娠と授乳を経れば胸はもともと変わります
手術を受けていてもいなくても、妊娠すると乳腺が発達して胸が大きくなります。そして授乳が終わると乳腺はまた縮んでいくんですね。問題は、伸びた皮膚が同じ速さでは戻らないことです。ボリュームは抜けたのに外側だけ残っている状態が、ここで生まれます。
ですから出産後に「手術のせいで垂れた」と断定するのは難しいです。手術を受けていない方にも同じ変化が来ます。ただインプラントが入っていると、その変化がどう見えるかは変わりうります。
この話を先に差し上げる理由があります。妊娠と授乳の時期の胸の形で手術の結果を判断してはいけないからなんですね。その時期は組織そのものが動き続けています。判断は落ち着いてからにします。
インプラントが入ったまま妊娠・授乳を経るとき
あらかじめ知っておかれると驚くことが減ります。以下はこの時期によくいただくお問い合わせです。
胸が目に見えて大きくなります
乳腺が発達する時期なので大きくなります。インプラントが大きくなるのではなく、その上の組織が膨らむんですね。授乳が終わればまた戻ります。
しこりや痛みがあるとき
授乳中のしこりや痛みは乳腺側の問題かもしれません。インプラントのせいだと先に決めつけず、産婦人科や乳腺の診療も併せて受けられるほうがよいです。
検診を受けられるとき
妊娠前でも授乳後でも、検査を受けられる際にインプラントがあることを必ずお伝えください。撮影方法が変わる部分があります。
この時期の形で判断しないこと
左右が違って見えたり位置がずれて見えたりすることがあります。組織が動いている最中だからです。再手術の判断はこの時期が過ぎてからにします。
授乳の予定を後から仰ると、なぜ難しいのか
手術の設計には戻しにくい部分があります。切開はもう入っていますし、インプラントが置かれる層も決まっています。後から「実は子どもを計画していた」と仰った時点で、選択肢は狭まっています。
逆に最初に仰っていただければ、いろいろと変わります。切開をどこに入れるか、乳腺組織をどこまで触るか、縮小やリフトを今入れるか見送るか。この判断が全部その一つの予定にかかっているんです。
仰りにくかった方もいらっしゃいました。まだ確定した予定ではないから、あるいは個人的な話だから。それでも教えていただくほうがよいです。その情報は手術の設計にしか使いません。
授乳が終わってからいらしたときに確認すること
出産前と同じ相談ではありません。組織が一度変わった状態なので、測り直す項目があります。
- ボリュームがどれだけ減ったか。上のほうが特に空いて見えることが多いです。
- 皮膚がどれだけ伸びているか。ここでリフトが必要かどうかが分かれます。
- 乳頭の位置が下がったか。下がった程度によって方法が変わります。
- 左右が違うふうに変わったか。授乳後にはよくあることです。
- 乳房超音波で現在の状態を確認します。
- 出産の予定がさらにおありか。あれば時期をあらためて相談します。
出産の時期によって何を優先するか
いつ頃を計画されているかによって、こちらからお勧めする方向が変わります。
| 計画の時期 | こちらが見るもの | お勧めする方向 |
|---|---|---|
| 1年以内 | 術後の回復と妊娠の時期が重なりうる | 出産後に見送るか、範囲を絞って設計する方向を相談 |
| 数年後 | その間に組織の変化が一度通り過ぎうる | 今手術するが、その後の変化の可能性を知って決める |
| 予定なし、または未定 | 今の状態を基準に設計できる | 現在の目標に合わせて計画、ただし可能性は開けておく |
| 授乳が終わったばかり | 組織の変化がまだ進行中でありうる | 十分な回復期間を置き、落ち着いてから判断 |
こちらの領域と産婦人科・小児科の領域
こちらがお答えできるのは手術と乳房の状態についての部分です。どの切開を使ったか、乳腺組織をどこまで触ったか、今の乳房がどんな状態か。これは測って診て申し上げられます。
一方、母乳の安全性、授乳中の薬、乳腺炎といった問題は産婦人科と小児科の領域です。根拠なくお答えするほうがかえって危ないと考えているんですね。そういうご質問をいただいたら、担当の医療者と相談されるようご案内します。
ですので妊娠・授乳を控えていらっしゃる方には、両方に通われることをお勧めします。こちらの診療記録が必要でしたら整理してお渡ししますし。情報が両側に揃ってこそ判断が正確になります。
胸をより大きく変えるのは手術ではありません
手術が胸を変えるということだけを考えていらっしゃると、順番を誤られることがあります。妊娠と出産、授乳を通して乳房が経る変化のほうが大きいのです。乳腺組織が増えてから減り、皮膚が伸び、ボリュームが抜けて下垂が生じる過程が数か月のあいだに起こります。これは手術の有無と関係なく訪れる変化です。
ですから実際にお決めになるべき問いは、手術が授乳に影響するかだけではありません。いつ手術するかも同じ重さで置いてご覧になる必要があります。出産のご予定が近いのであれば、その後になさるほうが結果が長持ちします。ご予定が数年先であれば、今なさってそのときの変化を後で改めて見るほうがよい場合もあります。
この判断は年齢や一般的な推奨時期では決めません。今の組織の状態、出産予定の時期、そしてその間に何を受け入れられるかを置いて決めます。相談でご計画をお聞かせいただければ、それぞれの順番の長所と短所をありのままに比べてお伝えします。
超音波で授乳の可否が分かりますか
相談でよくいただく質問です。正直に申し上げると、超音波は授乳ができるかどうかを教えてくれる検査ではありません。乳腺組織がどのくらいあるか、組織の状態がどうか、以前の手術がどこを通ったかは見えます。しかし出産後に実際にどれだけ母乳が出るかは、その値から計算されるものではありません。
それでも検査を行うのは、判断の材料を増やすためです。乳腺組織が十分に残っているか、以前の切開が乳管の集まる経路の近くを通っていたかが分かれば、手術方法を変えて組み立てられます。可能性を高める方向で設計する根拠になるのであって、結果を予測する道具ではありません。
授乳ができるかどうかは、実のところ手術歴だけで決まるものでもありません。手術を受けていない方のなかにも授乳が難しい場合があります。ですから当院は保証という言葉を使いません。今の状態で何ができて何が分からないのかを分けてお伝えすることが、当院にできる正確なご案内です。
もう一点申し上げると、授乳をお考えであれば、そのことを相談の早い段階で出していただくのが最も助けになります。手術が終わってからお知らせいただいても、すでに決まった設計は戻せません。切開をどこに置くか、乳腺組織にどこまで触れるかは、手術前にだけ変えられる選択です。
授乳について最も多いご質問
- 胸の手術後に授乳できますか?
- 術式と切開位置によって差が出ることはありますが、多くの場合は出産と授乳が可能です。とくに乳腺組織を直接切除しない方法では授乳機能が保たれる場合が多いです。ただし個人の解剖学的構造と手術計画によって差があり得るため、手術前のカウンセリングで十分に確認されるのがよいです。
- 出産の予定がありますが、いま手術してもよいですか?
- 出産のご予定があるからといって必ず先送りすべきというわけではありません。ただしその後の妊娠・授乳で乳房組織の変化が起こり得る点は考慮が必要です。ライフスタイルとご計画に合わせて適切な時期を一緒に定めます。
- どの切開が授乳に有利ですか?
- 切開位置によって差が出ることがあるため、授乳のご予定があればその点を反映して定めます。ただし切開だけで決まるのではなく、乳腺組織にどれだけ触れるかが併せて作用しますので、一つだけを見て選ぶことはしません。
- 乳房縮小のあとでも授乳できますか?
- 縮小は乳腺組織と乳管に関与する手術のため授乳に影響し得ます。可能性を高める方向で設計することはできますが、保証はできません。出産のご予定があればカウンセリングで必ずお知らせください。
- 授乳が終わってからどのくらいで手術できますか?
- 授乳直後は乳房組織の変化が続くことがあるため、十分な回復期間を置くことが大切です。正確な時期は状態を確認したうえでご案内します。組織が落ち着いてから設計してこそ計画が一度で終わります。
- インプラントがあっても乳房検診を受けられますか?
- 受けられます。検査を受ける際はインプラントがあることを必ずお伝えください。妊娠・授乳を控えていらっしゃるなら、その前に一度乳房の状態を確認しておかれることをお勧めします。
- 腋窩切開のほうが授乳に安全ですか?
- 腋窩切開は乳頭・乳輪から最も離れています。ただ切開位置ひとつで決まるのではなく、乳腺組織をどこまで触るかが併せて働きます。ですので切開だけを見て選ぶことはせず、状態と目標を一緒に置いて決めます。
- インプラントは母乳に影響しますか?
- この部分はこちらが断定して申し上げる領域ではありません。産婦人科と小児科の判断にまたがっているので、担当の医療者と相談されるようご案内します。こちらは手術方法と現在の乳房の状態について正確に申し上げるところまでです。
- 妊娠すると胸が大きくなると聞きますが、インプラントがあるとどうなりますか?
- 乳腺が発達する時期なので大きくなります。インプラントが大きくなるのではなく、その上の組織が膨らむんですね。授乳が終わればまた戻ります。この時期の形で手術の結果を判断なさらず、落ち着いてからご覧になるほうが正確です。
- 授乳が終わったら左右が変わってしまいました。
- 授乳後にはよくあることです。組織量とたるみの程度が左右で違うふうに変わることが多いんです。その場合は左右をそれぞれ測って別々に設計します。乳房超音波と診察で確認してから方法を決めます。
授乳と併せてご覧いただきたい案内
ご計画を知って設計すると選択肢が広がります
出産のご予定と授乳についてのお考えをお知らせいただければ、それに合わせて術式と時期を一緒に定めます。いまは見送るほうがよければ、そうお伝えします。
