傷跡が残らない手術はありません
切開をすれば傷跡は残ります。選べるのは、どこに残すか、そして残ったあとにどう管理するかです。
傷跡は切開位置を決めた瞬間に決まります
豊胸ではインプラントが入る通り道が必要で、その通り道が切開です。ですから「傷跡をどこに置くか」は事実上、手術設計の最初の項目です。傷跡をなくす方法はありませんが、服を着たときや日常で目に入りにくい場所へ移す判断は可能です。
ただ、切開位置は傷跡だけを見て決めるものではありません。どのインプラントをどの層に入れるか、組織の状態はどうか、再手術か初回かによって、取れる選択肢が変わります。傷跡の位置だけを優先して決めた切開が手術そのものを難しくすれば、結果が悪くなるんですね。この順序をひっくり返さないことが大切です。



切開位置ごとに傷跡が残る場所
以下は位置の違いを理解するための整理であり、どちらが優れているという意味ではありません。
| 切開位置 | 傷跡が残る場所 | 併せて考えること |
|---|---|---|
| 腋窩(わきの下) | わきのしわの内側。胸そのものには傷跡が残りません。 | 胸から離れた位置から進めるため内視鏡を活用することが多くなります。 |
| 胸の下縁(アンダー) | 胸の下の折れ線に沿って残ります。 | 手術の視野を確保しやすく、世界的に広く用いられている方法です。 |
| 乳輪の縁 | 乳輪と皮膚の境界に沿って残ります。 | 境界に沿うため比較的目立ちにくい一方、乳輪の大きさや解剖学的条件の影響を受けます。 |
どの切開が絶対に良いとは申し上げません
それぞれに長所と短所があり、一つを正解とは決められません。腋窩は胸に傷跡が残らない代わりに距離が遠くなります。下縁は視野が良い代わりに胸の下に線が残ります。乳輪は境界に隠せますが条件が合う必要があります。ですからカウンセリングで体型と組織の状態、望む結果を併せて見て決めます。
プリザーブのように組織の温存を重視する方法も特定の切開法に縛られていません。切開の長さは比較的短くなり得ますが、大切なのは切開位置よりも組織をどれだけ温存しながら手術するかです。切開法の名前だけで傷跡の結果を約束する説明は信頼されなくて構いません。
傷跡の最終的な見え方を左右するもの
手術だけで決まるわけではありません。次の四つが同時に働きます。
切開の長さと位置
短いほど、そして張力がかかりにくい場所ほど有利です。ただし無理に短くした切開が組織の損傷を増やせば、かえって不利になります。
縫合と仕上げ
層ごとに張力を分けて受けるよう丁寧に縫合することが、広がりを抑えるのに役立ちます。抜糸の時期も部位の状態に合わせて定めます。
皮膚のタイプと体質
同じ手術でも傷跡の形や回復の速さは人によって異なります。ケロイド傾向がある、以前の手術の傷跡が厚かったという場合は事前にお知らせください。
回復期の管理
最初の数か月の管理が結果に影響します。軟膏と貼付タイプの製品、紫外線対策、禁煙がここに含まれます。
時期によって管理方法が変わります
U&Uのアフターケアプログラムにおける傷跡管理の構成です。実際の適用は傷跡の状態を見て定めます。
- 01
術直後:傷が治っていく期間
この時期は傷を刺激しないことが管理のすべてです。シャワーの時期は切開部位の状態によって変わりますので、ご自身で決めずご案内に従ってください。
- 02
3か月以内:軟膏と貼付タイプの製品
複数の傷跡用軟膏を併用しながら、Steri-strip、CicaCareなどの貼付タイプを追加します。傷跡が赤く目立って見える時期ですが、多くは時間とともに落ち着いていきます。
- 03
3か月以降:レーザーの検討
状態に応じてトーニングレーザー、フラクセルレーザーなどを試みます。すべての方に必要なわけではなく、傷跡の色と質感を見て判断します。
- 04
1年以降:瘢痕形成術の検討
その時点でも傷跡が広がっている、あるいは盛り上がっている場合は局所麻酔下の傷跡修正術を検討します。傷跡修正術は院長の診療範囲に含まれる領域です。
傷跡に不利に働くこと
以下は避けられる要素です。管理ではこの部分が最も大きく分かれます。
- 喫煙。血行を落として傷の回復を妨げ、傷跡の形成にも影響します。
- 傷跡部位の紫外線曝露。色素沈着が長く残ることがあります。
- 治りきる前の無理な上半身運動や腕の使用。切開線に張力がかかります。
- 傷を掻いたり、かさぶたを無理にはがすこと。
- 赤みが残っているからと管理を途中でやめること。
- 効果の確認されていない製品をご自身で塗ること。まず相談で確認してください。
海外からお越しの場合
傷跡の管理は手術の翌日に終わるものではなく、数か月にわたる過程です。ですから帰国後も続けられるよう、必要な製品と使い方、確認すべき変化を整理してお渡しします。経過のお写真をお送りいただければ遠隔で状態を確認します。
滞在日程は切開位置と手術範囲によって変わります。抜糸と初期の経過確認をどこで行うかが日程設計の要ですので、カウンセリングでまずこの部分を定めます。
傷跡は時間とともに変わります
今見えている姿が最終ではありません。ただ人によって速さが違うので、期間を断言して差し上げることはしません。
| 時期 | おおむねこう見えます | このとき行うこと |
|---|---|---|
| 治っていく間 | 線がはっきりしていて周りが腫れていることがあります | 刺激しないことが管理のすべてです |
| 最初の数か月 | 赤く盛り上がって見える時期です | 軟膏と貼付タイプの製品、紫外線対策 |
| 3か月以降 | 色と質感が少しずつ落ち着いてきます | 状態を見てレーザーを検討します |
| 1年ごろ | おおむね落ち着いた姿に近づきます | 残っている部分があれば修正を相談します |
再手術だと傷跡がもう一つ増えますか
まず見るのは、以前の傷跡を再び使えるかどうかです。使えるなら新しく入れません。ですのでご相談にいらっしゃるときに以前の手術記録と切開位置を教えていただけると、判断が早くなります。
ただ、いつもそうなるとは限りません。やるべきことが以前の切開では届かない場所にあれば、別の経路が必要です。インプラントを入れ替えることと空間を作り直すことでは、必要な視野が違うんですね。
そのときは、なぜ別の切開が必要なのか、傷跡がどこにもう一つ残るのかを事前に申し上げます。手術当日に知ることになってはいけませんから。以前の傷跡が厚く残った方は、その点まで踏まえて計画を立てます。
傷跡についてよく耳にする誤解
相談で正すことになるお話です。どこで聞かれたにせよ、一度確認しておかれるほうがよいです。
内視鏡を使えば傷跡が小さくなる
内視鏡は、腋窩切開のように到達距離が遠い場合に視野を確保するために使う道具です。切開の長さを短くすると約束する機器ではありません。
切開法の名前が結果を決める
同じ名前の切開で手術しても結果は人によって違います。組織をどれだけ温存したか、縫合をどうしたか、その後の管理をどうしたかが一緒に働きます。
赤ければ失敗だ
初期は赤く盛り上がって見えることがあります。おおむね時間とともに落ち着く経過をたどるんですね。ただ広がったり厚くなる感じがあれば、経過確認のときに仰ってください。
よいという製品は塗るほどよい
時期に合った製品が別にあります。治りきる前に塗るとかえって刺激になりますし。効果の確認されていない製品をご自身で使われることもお勧めしません。
傷跡を動かせる範囲と、動かせない理由
傷跡をもう少し目立たない位置へ動かすことはできます。ところが、どこまで動かせるかは傷跡だけの問題ではありません。入れるインプラントの大きさ、置かれる層、組織の厚み、そして再手術かどうかが、選択肢を先に狭めています。
たとえば大きなインプラントを入れるのに切開を無理に短くすると、入れる過程で組織に負担がかかります。すると傷跡の位置は気に入っても回復が悪くなります。この交換条件を隠さず申し上げるのがこちらのやり方なんですが。どちらを取られるかは説明を聞いてお決めいただければと思います。
ですので相談で傷跡の話をするときは、「ここへ動かせます」と「ここは難しいです」を一緒に申し上げます。できることだけ申し上げると、後でがっかりされることになりますから。
手術前に教えていただきたいこと
この情報があると切開と縫合、管理計画が変わります。些細に見えても仰ってください。
- 以前の手術や傷の傷跡がどう残ったか。
- ケロイドや肥厚性瘢痕の診断を受けられたことがあるか。
- 喫煙の有無。減らせるか、やめられるかも一緒に相談します。
- 職業や運動で腕や上半身をよく使われるか。
- 屋外での活動が多いか。紫外線対策の計画が変わります。
- 今お使いの傷跡関連の製品があるか。
切開位置によって初期に気をつけること
管理の大枠は同じですが、気をつける点が少しずつ違います。
| 切開位置 | 初期に特に気をつけること | 管理で変わる点 |
|---|---|---|
| 腋窩 | 腕を大きく上げたり無理に使う動作 | 衣類とこすれやすい場所なので貼付製品の管理に気を配ります |
| 乳房下のしわ線 | 下着のワイヤーが切開線に当たること | 着用の時期と下着の種類を経過に合わせてご案内します |
| 乳輪の周囲 | 境界部をこすったり刺激すること | 軟膏の塗り方を境界線に合わせて別途お伝えします |
| 共通 | 紫外線曝露と、治りきる前の上半身運動 | 遮断と活動再開の時期は経過を見て決めます |
瘢痕形成術をお勧めするときと、お待ちいただくとき
1年が過ぎても傷跡が広がっていたり盛り上がっていれば、局所麻酔下の瘢痕形成術を検討します。これは代表院長の診療範囲に含まれる領域です。他院で手術された後の傷跡のご相談もお受けしています。
ただ、いらっしゃる方の中にはまだお待ちいただくべき場合のほうが多いです。まだ落ち着いていく途中の傷跡に手を入れると結果がよくないんですね。ですのでこちらは、時期が早ければ早いと申し上げて、その間にできる管理をご案内します。
修正すると決めた場合でも、どれだけよくなるかを前もってお約束はしません。傷跡の幅と位置、体質によって変わるからなんですが。今の状態を見て、見込まれる範囲を先に申し上げてからお決めいただきます。
同じ切開なのに傷跡が違って残る理由
同じ位置を同じ方法で切開しても、残る傷跡は人によって違います。手術そのものより、その方の皮膚が決める部分が大きいのです。特に二つを相談で確認します。傷跡が厚く盛り上がる傾向がおありか、そして傷が治った跡に色素が濃く残る傾向がおありかです。
この傾向は肌の色が濃いほどより多く観察されます。海外からお越しの方にこの点を先にお尋ねする理由です。ただ肌の色だけで決まるわけではなく、家族歴と以前の傷がどう治ったかのほうがより直接的な根拠になります。ですから以前の手術や傷の跡を写真でお送りいただけると助かります。
傾向が確認できれば、それに合わせて計画を変えます。切開の位置を変えるか、縫合の方法を調整するか、回復期の傷跡管理をいつから始めどれくらい続けるかが変わります。そしてどの程度まで良くなり得るかを先にお伝えします。守れない約束をしないことが、この部分では特に大切です。
見えないところにも傷跡はできます
傷跡というと皮膚に残る線を思い浮かべられます。ところが組織が治る過程は皮膚だけで起きるのではありません。切開して空間をつくった場所の内側の組織も同じように治ります。目に見えないだけです。
この内側の傷跡は触感と形に影響します。特定の部位だけが硬く触れる、腕を動かすときに引っ張られる感じが残る、時間とともに形がわずかに変わる。こうしたことにこの過程が関わっています。回復期にご案内するマッサージや管理プログラムは、皮膚の傷跡だけでなくこの内側の組織を狙ったものでもあります。
ですから傷跡の相談を皮膚だけで行いません。表面の線が薄くなっているかとあわせて、内側がどう治っているかを超音波で確認します。表面はきれいに治ったのに内側が厚くなっている場合があり、それは目で見て分かるものではありません。
切開と傷跡について最も多いご質問
- 豊胸後の傷跡はどのくらい残りますか?
- 傷跡の位置と長さは切開方法によって変わり、最終的な見え方は皮膚のタイプや体質によっても差があります。初期は赤く目立つことがありますが、時間とともに次第に落ち着く場合が多いです。具体的な数値を約束する説明は正確ではありません。
- 腋窩切開と下縁切開、どちらが良いですか?
- 腋窩切開は胸そのものに傷跡が残らない利点があり、下縁切開は手術の視野を確保しやすい特徴があります。それぞれに長所短所があり、どちらが無条件に優れているとは言いにくいです。体型と組織の状態、望む結果を併せて見て選びます。
- 傷跡をほとんど見えなくできますか?
- そのようにはお約束しません。切開を短くし目立ちにくい場所へ移すことは可能ですが、傷跡の最終的な見え方は体質と回復過程の影響を受けます。当院は予想される範囲を先にお伝えしてから始めます。
- ケロイド体質ですが手術できますか?
- 以前の傷が厚く残った、ケロイド傾向があるという場合はカウンセリングで必ずお知らせください。切開位置と縫合方法、管理計画をそれに合わせて変えます。状態によっては慎重に判断すべき場合もあります。
- すでに残っている傷跡も修正できますか?
- 可能です。多くは1年以降に局所麻酔下の傷跡修正術を検討し、それまではレーザーと軟膏の管理で経過を見ます。傷跡修正術は院長の診療範囲に含まれ、他院手術後の傷跡のご相談も承ります。
- 術後いつから傷跡用軟膏を塗りますか?
- 傷が閉じたあとに始め、正確な時期は切開部位の状態によって異なります。自己判断で始めず経過確認の際のご案内に従ってください。3か月以内は軟膏と貼付タイプを併用することが多くなります。
- 内視鏡を使えば傷跡が小さくなりますか?
- 内視鏡は、腋窩切開のように到達距離が遠い場合に視野を確保するために活用されます。切開の長さを短くすると約束する機器ではありません。傷跡の結果は切開の長さ一つではなく、組織の温存と縫合、その後の管理が一緒に作ります。
- 傷跡がまだ赤いのですが、おかしいのでしょうか?
- 初期は赤く盛り上がって見えることがあります。おおむね時間とともに落ち着く経過をたどるんですね。ただ傷跡が広がったり厚くなる感じがあれば、経過確認のときに仰ってください。そこから管理方法を調整します。
- 再手術をすると傷跡がもう一つできますか?
- 以前の傷跡を再び使えるなら新しく入れません。ただ、やるべきことが以前の切開では届かない場所にあれば別の経路が必要です。その場合はなぜ必要なのかと、傷跡がどこに残るのかを手術前に申し上げます。
- 傷跡部位の紫外線対策はいつまで必要ですか?
- 傷跡部位に紫外線が当たると色素沈着が長く残ることがあるので、管理期間中はずっと遮断していただくほうがよいです。正確な期間は傷跡の状態によって違いますので、経過確認のときにご案内します。屋外での活動が多ければ前もって仰ってください。
